メンバーからは、様々なGood Practiceが発表されました。その内容は、必ずしも「メンタルヘルス」をテーマとしたことだけでなく、ダイバーシティ推進や、キャリア開発、職場内の良い行動を称賛する活動など、多岐に渡りました。また、多くのGood Practiceが全社的に行われていることではなく、部門単位などで独自に実施していることが印象的でした。健康いきいき職場づくりでは、職場単位で、その仕事内容や環境に合った形での施策を、自分たちが考え出して実施することに意義があります。その意味で、各職場が工夫をしながら、働く環境(仕事そのものへの工夫や、人間関係や組織風土に関することなど)を良くして行こうとする活動があるというのは、大きな組織資源と言えるでしょう。
今後、こうした活動を一つの事例として存在させるだけでなく、組織(会社)として目指したい方向と合致して展開されていくこと、事例を組織全体で共有できるようになること、良いものは他部門も真似をして横展開できるようになることなどが重要になってきます。また、健康いきいき職場づくりの活動として展開する場合には、その活動によりポジティブなメンタルヘルス(ワーク・エンゲイジメント)や、職場の一体感がどう上がって行くかを確認できると良いでしょう。それにより、ただ活動を展開するだけでなく、評価を入れることで、PDCAサイクルを回しながら、改善や工夫を加えて行けるからです。
今回、メンバー間で交換された情報や、東京大学の川上先生、島津先生のコメントを参照されながら、健康いきいき職場づくり推進のために活用できると良いと思います。
後半は、大阪府立大学教授の北居明先生をお招きして、「AI(Appreciative Inquiry)を活用した組織開発」について、講義と実際のワークショップの体験を行いました。北居先生からは、実際にあった事例を基に、「問題解決手法」を重視して失敗する場合、「組織開発手法」を活用して成功する場合についてわかりやすくお伝えいただきました。
何か問題を解決しようとするとき、まずその問題が何かを特定し、原因を探し、対策を打つ、という「問題解決手法」に、私たちはあまりに慣れ過ぎています。しかし、この「問題」と思われることが「人」に関するものであった場合、従来の問題解決アプローチを安易に採用すると、大きな失敗に陥ることがあります。なぜなら、「問題」を特定しようとするうちに、往々にしてそれが「何が問題か」でなく、「誰が問題か」という犯人探しになってしまうからです。こうなると、組織はさらに良くない雰囲気にさらされます。さらに、そもそもその「問題」とされた事象が本当に「問題」なのかということがほとんど問われず、問題とされたことへの「答え」を見つけることに注力してしまい、本当の解決から遠のくこともあります。
そうならないために、「どこが強みなのか」、「どこが誇りなのか」、といったポジティブな視点を問うAIの手法を用いる方法を取り入れてみることが、「人」の要素が大きく影響する組織変革には必要とされるのです。
当日は、AIで用意されるワークの一部を体験し、その良さを実感していただきました。こうした取組が、従来の「階層別研修」や「ビジネススキル教育」などと並行して、多くの組織で実行されると、職場の様子が変わってくるかもしれません。
当日はこのほか、川上先生より、本研究会の一つの目的である、健康いきいき職場づくりのための「行動計画」策定についてポイントの解説をいただきました。また、健康いきいき職場づくりを組織内で進める際の、活動のネックになる要因、あるいは後押しになる要因について、意見交換の時間を持ちました。
さて、いよいよ次回は、参加メンバーが今後、どのように健康いきいき職場づくりを推進されるか、「行動計画」の発表です。どのような計画が生まれるか、楽しみにしております。