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2019年12月17日

「冬季シンポジウム2019」サマリーをアップしました!

2019年12月5日(木)、浜離宮朝日ホール 小ホール(朝日新聞社 東京本社内)にて冬季シンポジウムを開催しました。
今年度のテーマは『AI時代の働き方とウェルビーイング』と題し、学識者から企業経営者まで幅広い分野から論客を招聘し、講演やパネルディスカッションを通じて多彩な意見・問題提起がなされました。年末のご多用の折にも関わらず、当日は約270名の方々に参加いただき、盛会となりました。

 AIIoT、ロボティクスといったデジタルテクノロジーの発展と活用が急速に拡がっており、こうした変化への適応が企業や組織の生き残りを決するとも言われています。新しい情報技術の導入は、人財に求める能力、働き方や雇用のあり方など企業と個人の関係にも大きな影響を与え、また、働く人ひとりひとりの仕事のやり方や内容、やりがいや心理的な負荷、ストレスにも影響が生じていると考えられます。

 一方、企業などによる国連SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが拡大するなか、目標の1つとして取り上げられているウェルビーイング(Good Health And Well-Being)という言葉が改めて注目されています。1946年の世界保健機関(WHO) 憲章の草案では、「健康とは、病気でないとか弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態(Well-Being)にあることをいう」と定義されています。ウェルビーイングの考え方を取り入れ、働く人のモチベーションやワーク・エンゲイジメントといった心理社会的資源をより重視し、生産性や業績向上につなげるという視点が益々重要になると考えられます。

 今回のシンポジウムは、デジタル時代の到来が企業と個人の関係性や働き方をどう変化させていくのか、また私たちひとりひとりの働きがいやストレス、働くことによる満足感にどういった影響があるのか、ウェルビーイングという視点から議論します。また、その実践的な取り組みや実証的な研究成果などについて検討し、ご参加企業のより善い経営を支援するために開催しました。


 冒頭、日本生産性本部ICT・ヘルスケア推進部長 広江秀樹より主催者挨拶、そして東京大学大学院教授 川上憲人様よりフォーラム代表挨拶および健康いきいき職場づくりの役割をお話いただきました。川上先生からはフォーラムの特徴や「健康いきいき職場づくり」の考え方、設立後7年間の取り組みをご紹介いただきました。


■東京大学大学院 川上教授



 続いて慶応義塾大学 教授 山本 勲様より『AI時代の働き方とウェルビーイング』と題してご講演いただきました。山本様は早稲田大学教授の黒田祥子様と、20193月に経済産業研究所よりディスカッションペーパーとして「AIなどの新しい情報技術の利用と労働者のウェルビーイング:パネルデータを用いた検証」を発表されました。その研究内容を中心に、AI時代における日本的雇用慣行変容の可能性、人材育成への影響、雇用と生産性に関する考察などについてご講演いただきました。
 AIなどの新しい情報技術の導入・活用はルーティンタスクが相対的に多く、働き方改革を実施している組織において取り組みが進んでおり、全般的に新しい情報技術が労働者のウェルビーイングを改善する傾向があることが紹介されました。また、新しい情報技術の積極的活用や人材の外部登用など、仕事の進め方を見直している企業では、長時間労働の是正が企業業績の向上にもつながりやすいことが紹介されました。


■慶應義塾大学 山本教授

 

 続いては、株式会社ルネサンス 取締役専務執行役員 高﨑尚樹様より、『企業の持続的成長と個人の健康、働きがい』と題してご講演いただきました。同社は、経営戦略として健康経営を実践するばかりではなく、健康経営そのものを日本企業に広めていくための推進者としても大きな役割を果たしておられ、その取り組みを支援する活動や事業など、具体的な取組みが紹介されました。また政府や自治体とも協働しながら、日本全体の健康づくりを実現する政策づくりや健康をテーマとした地方創生事業の展開にも積極的に参画しておられることも紹介されました。
 取り組みにおける基本的な考え方として、「どういう社会と会社を創りたいのか」というビジョンを明確にすることが大切であり、企業の成長と個人の健康、働きがいを高めていくためには、明確にしたビジョンに向かって「正しく、たのしく、健康づくり」を実践することが重要であることが指摘されました。


■株式会社ルネサンス 高崎様

 

 続いてのセッションではパネルディスカッションを行いました。テーマを『AI時代の働き方とウェルビーイングを考える』と題して、慶応義塾大学 教授 島津明人様、株式会社エクサウィザーズ Med Tech部 部長 羽間康至様、ロート製薬株式会社 広報・CSV推進部 部長 河崎保徳様、既にご講演頂いたルネサンスの高﨑様の4名に登壇いただき、講演とパネルディスカッションを行いました。

 冒頭、コーディネーターの島津先生から国連SDGs(持続可能な開発目標)におけるウェルビーイングの位置付けや、ILO(国際労働機関)で議論されている「これからの働き方」や「仕事の未来」について、また労働を取り巻く技術革新、人口動態、気候変動やグローバル化の影響などが紹介されました。また、働き方は「労働、牢働」から「主体的朗働」へ、人々の価値観は「物質的価値、情報的価値」から「情緒的価値」へ移っていくのではないかとの問題提議がありました。


■慶應義塾大学 島津教授による話題提供の様子

 

 羽間様からはAIベンチャーの立場でご講演いただきました。エクサウィザーズは「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」ことをミッションとしており、医療、介護、金融、人財、ロボットなど様々な分野でのサービスを展開していることが紹介されました。その活用においては、利用者側が「経営課題」とAIの「利用目的」をいかに明確にして取り組むかが成果創出のポイントになっているとのことで、曖昧な場合には良い結果が得られないことが多いとのことでした。一方、成果創出に成功する事例も増えてきており、コスト削減、業務効率化、売上拡大、新事業創出など、活用領域は拡大する傾向にあるとのことです。
 人財や働く人のヘルスケアの分野では、人財や組織ごとのパフォーマンスやエンゲイジメントの状況をデータ化してAIで分析し、その集計結果を産業医、保健師と連携して取り組みに活用できるサービスも自社内での試行を含めて検討を重ねているとのことでした。また、AIが行き渡った世界での働き方は、中間管理職の役割が経営側と現場側の二極へ分解され、企業の創業期のような「経営者」と「現場」といった姿になるのではないかとの考え方が紹介されました。

 河崎様からは『社員の自立と主体性を生み出すチャレンジ for Well-Being』と題した講演のなかで同社の働き方改革への取り組みや健康経営の推進についてご紹介いただきました。同社の働き方改革の原点は神戸や東北の大震災における復興支援活動にあり、現地でいきいきと復興に関わる人々から大きな刺激を受けたとのことです。
 社会問題から目をそらさず、社員の喜びの軸を変えていく事が幸せにつながることをモットーとし、人のモチベーションの源泉を豊かにすることで困難への挑戦の推進力を高めているとのことです。社員の個性と自主性を活かすため、若手社員から提言のあった「兼業・副業解禁」を2016年より社外チャレンジワーク、社内ダブルジョブ制度として開始、実際に制度を活用して自立(自律)を目指してもらい、各々の個性を活かして「石垣」をつくるように会社を強くしていきたいとのことであった。
 健康経営ではストレスチェックの集団分析結果を活用しており、特に「仕事の裁量」と「ワーク・エンゲイジメント」を重視している。その結果からも「兼業・副業解禁」による組織の活性化が読み取れることも紹介された。

 パネルディスカッションでは、コーディネーターの島津教授が3名のパネラーに対し、発表内容に関する質問をする形で議論が進められました。羽間様とは「AIなどテクノロジーで出来ること、出来ないこと」について議論が行われ、AIはあくまで道具であり、本来人間だけが出来ることに集中するために使うべきであるといった事が議論されました。河崎様とは「副業制度」について議論が行われ、業務経験や副業従事時間などに制約があるが、制度導入によって社員全体の人生設計への意識向上やキャリアの自己申告が増加しているといったことが議論されました。高﨑様とは「人間らしさ」や「行動変容」について議論が行われ、“人は動物である”ことを再認識すべきであるといったことや、人を動かすには「北風と太陽」が必要であり、理念だけではなく利害も重要であることが議論されました。


■パネルディスカッションの様子
(左から慶應義塾大学 島津教授、ルネサンス 高崎様、
          エクサウィザーズ 羽間様、ロート製薬 河崎様)

 

 最後に、健康いきいき職場づくりフォーラム事務局より活動報告と来年度の活動紹介をおこない、盛況のうちにシンポジウムは閉会いたしました。



【健康いきいき職場づくりフォーラム事務局より】

 健康いきいき職場づくりフォーラム冬季シンポジウム2019へ、大変多くの方々にご参加いただき、誠にありがとうございました。健康いきいき職場づくりフォーラムでは、昨今の働き方改革・健康経営などの動きも踏まえ、職場を働きやすくまた働きがいのある場所に、また個人も健康でいきいきと仕事にやりがいを持てるように、組織・個人の両輪から健康いきいき職場づくりを積極的に推進して参ります。

 今後もより多くの皆様に、この活動にご興味をお持ちいただき、会員として一緒に取り組んでいただけますよう、この場をお借りしてお願い申し上げます。


■今回も大変多くの方にご来場いただきました

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