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2020年06月16日

「第3回新型コロナウイルス緊急対応セミナー」サマリーをアップしました!

2020年6月15日(水)、「新型コロナウイルス緊急対応セミナー」を開催いたしました。同セミナーは、第2回に引き続きオンラインセミナーとして実施され、約50名もの方々にご参加いただきました。第3回となる今回は、『“新しい生活様式”下での働きがい、健康、ワーク・ライフ・バランス』をテーマに据えて行われました。学識者および労働組合執行部による講演や質疑応答では、多様な観点から“新しい生活様式”への対応方法と今後の新しい働き方に関する問題提起がなされました。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、多くの企業においてテレワークなどの新しい働き方への移行が進んでいます。ここ数か月間の急激な働き方の変化が、従業員や組織に大きな影響を与えていることは言うまでもありません。
第3回となる今回は、“新しい生活様式”のもとで、いかにして働きがいを見出すのか、健康面をどのようにマネジメントするのか、そしてワーク・ライフ・バランスをどう構築するのかをテーマに据えて行われました。


 冒頭、武蔵大学経済学部経営学科教授 森永雄太氏より、『“新型コロナ”下でもいきいき働く~ジョブ・クラフティングの観点から~』と題してご講演いただきました。

 はじめに、新型コロナウイルス感染拡大に伴ってテレワークという働き方が急速に浸透した現状に対して、いわば「分散を“強いられた”」状態であるとし、「“強いられている”私たちがいかにして自律的に働くのか」が課題であると問題提起いただきました。
 自律的に働くことを実現するにあたっては、組織の指示通りに働くのではなく従業員それぞれが主体的に仕事を創造する「ジョブ・クラフティング」がキーワードになるとご紹介いただきました。ジョブ・クラフティングには、①仕事そのものを変える、②関わる人間関係を変える、③仕事の認識を変える、の3層が含まれ、ワーク・エンゲイジメント向上につながることが明らかにされているそうです。さらに、クラフティングという視点は“ジョブ”だけでなく、“ホーム”や“レジャー”に対しても適用可能であり、仕事と家庭との両立や余暇の活用においても重要な意味を持つとご指摘いただきました。


 続いて、東京大学大学院医学系研究科助教 渡辺和広氏より、『こんな状況だからこそ大切にしたい身体活動』と題してご講演いただきました。

 新型コロナウイルス感染拡大によって、多くの人々において身体活動(仕事や家事、移動などの日常の動作、運動)の変化が起きていることをご紹介いただきました。以前から身体活動を積極的に行う習慣がある場合には、“自粛“が求められる生活においても身体活動が増加する傾向にある一方で、身体活動が習慣化していなかった場合には、身体活動がより減少するという、二極化傾向の研究結果が示されているそうです。
 身体活動はメンタルヘルスや免疫機能の向上などの心身の両面に対する効果が見込めることから、“新しい生活様式”においても重要な役割を担うであろうことをご指摘いただきました。従業員の身体活動促進のためには、従来行われてきた事業所内での設備整備といった環境調整にとどまらず、自宅まで広げるための新たなサポート体制が求められるとご提言いただきました。さらには、新しい働き方においてもそれらのサービスを利用しやすいようルールを新たに策定することも重要であると問題提起していただきました。


 続いて、合同会社ジョインCEO 家田佳代子氏より、『今こそ考えたいアフターコロナのワーク・ライフ・バランス』と題してご講演いただきました。

 冒頭、テレワーク導入率は全国平均27%であり、緊急事態宣言解除後には、十分な準備をすることができずにテレワーク導入に至った企業における“失敗”事例の影響を受け、テレワーク導入率は減少傾向にあることをご紹介いただきました。
 緊急事態宣言により多くの企業がテレワーク導入を迫られたことで、テレワークによるメリットだけでなく、仕事のオン・オフの切り替えづらさや、自宅で仕事に集中できる環境整備の不十分さ、コミュニケーション・ロス、人事評価の難しさなどのテレワークによるデメリットがより顕在化したことをご指摘いただきました。なかでも、労務管理や安全配慮義務といった点がテレワーク導入における大きな課題となっている企業も見受けられるとのことです。
 テレワークという働き方はワーク・ライフ・バランス実現のために必要な方法の一つであるとし、業務方法の見直しや、従業員間の不公平感の低減、意識改革などを行いながら、仕事と家庭とのバランスに配慮する柔軟な働き方に対応した制度の規定、さらには両立しやすい企業文化の醸成が求められるとご指摘いただきました。


 最後に、日清オイリオグループ労働組合中央執行委員長 河原夏樹氏より、労働組合での取り組み事例についてご講演いただきました。

 テレワークが従業員にもたらした影響として、①通勤時間削減によるワーク・ライフ・バランス向上、②会食削減による子育てなどの家庭の時間の向上を挙げ、労働組合としてはこの契機を活かし今後もテレワークを促進する姿勢であることをお話しいただきました。
 一方で、テレワークにおける課題点として、①テレワーク対応の有無による不公平感(生産ラインではテレワーク対応が困難である)、②部署・上司ごとのテレワークに関する意識の相違、③労働組合として組合員の現場の声を拾うことの難しさ、④飲み会などを含めた上司・部下間のコミュニケーション機会の減少を挙げていただきました。
 そこで同組合では、海外拠点を含めたオンラインでの対話の機会の設定や、オンラインでの健康教室やランチ会などの企画を行っていることをご紹介いたただきました。
 今後に向けて、上司・部下間のコミュニケーションのあり方について組合員である部下側だけではなく、上司側も含め双方の意見を聴きながら検討し、新型コロナによる影響下においても「いま何ができるか」を考え続けていきたいとお話しいただきました。


 その後、チャット機能を用いた質疑応答の時間では、活発な意見交換がなされました。

 「ジョブ・クラフティングを進めるにあたり、上司の理解と従業員自身の主体性を高めるためのポイント」についての質問に対しては、森永先生より「“失敗しても良いので工夫して学びを”という目標を職場で共有することが重要。上意下達のような支配的なマネジメントスタイルは、テレワークおよびジョブ・クラフティングのあり方とそぐわない。上司・部下で意思決定のプロセスを共有することが求められる」とご回答いただきました。

 「従業員における身体活動促進のための報酬・ペナルティ制度のあり方」についての質問に対しては、渡辺先生より「ペナルティ実施は倫理上難しく、それよりも従業員それぞれが取り組むことにメリットを感じる仕掛けが重要。例えば、ある一定の水準でいくつかの層に区切り、そのなかでの上位者をそれぞれ表彰することも効果的である。報酬については、従業員のニーズを汲んだ上で設定すると良い」とご回答いただきました。

 「テレワークに伴う光熱費・通信費等を手当化することは、企業におけるテレワーク推進の足かせになるのでは」という質問に対しては、家田先生より「週5日あるいは週の半分以上が在宅勤務であれば通勤手当をなくす場合がある。また、“みなし労働”とすることで残業代が減る場合もある。それらの費用でテレワークに関連するそのほかの費用にまわすことは可能であると考えられる」とご回答いただきました。
 
 「“新しい生活様式”に向けて労働組合として今後力を入れていきたいこと」についての質問に対しては、河原様より「6月から組合員とのオンライン上での対話を行っている。テレワークを含めた働き方改革の流れをこの場限りのものにせず、今後も継続的に会社とともに取り組んでいきたい」とご回答いただきました。


 最後に、健康いきいき職場づくりフォーラム事務局より、開催を予定している第4回および定例セミナーについてご案内し、盛況のうちにセミナーは閉会いたしました。

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