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2020年07月27日

2020年7月15日開催「健康いきいき職場づくりフォーラム定例セミナー」サマリーをアップしました!

2020年7月15日(水)、「健康いきいき職場づくりフォーラム定例セミナー」を開催いたしました。同セミナーは、4月24日に開催予定だったものを順延し、オンラインに変更して実施され、約40名もの方々にご参加いただきました。本セミナーは、『若手社員の活性化とメンタルヘルス』をテーマに据えて行われました。学識者および企業実務者による講演や質疑応答では、若手社員の定着やエンゲージメント向上、参画意識を得やすい実践事例等、若手社員が健康でいきいきと働くとともに、そのための組織づくりに必要な要素についての問題提起がなされました。

近年、若手社員を取り巻く環境は変化しているといわれます。「心の病」の若手層での増加傾向、以前と比較しての気質の変化、若者を迎え入れる組織側の体制の問題など、さまざまな要素が指摘されています。そして今年、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、新入社員とのコミュニケーションは、これまでと全く異なる形態を強いられることになりました。いわば、これまでの常識が通用しなくなった現下においてできることは何かが問われているといえ、それを見据えての学識者、企業実践者による議論が行われました。

 

冒頭、日本生産性本部 メンタル・ヘルス研究所主任研究員の本間友貴より、論点整理として、「なぜ、いま若手社員なのか」についての社会的背景が説明されました。それによると、近年の若手社員を取り巻く環境として、「心の病」の増加や離職率の高止まりなどがあり、その背景には、若者の意識の変容を組織側がつかみ切れていないのではないか、また、そもそも職場側に余裕がなくなり、若者の力を発揮させられていないのではないか、そのため、若者について考えることは、同時に組織のあり方を感がることにもつながるのではないかという問題提起がなされました。

 

続いて、『若手社員の離職・モチベーション低下が起きる組織的構造』と題して、青山学院大学経営学部教授の山本寛氏よりご講演いただきました。山本氏からは、多くの企業で、若手社員のモチベーションや会社への愛着低下や、それらを原因とした退職者増加が問題となっている中、この問題を近年重要性が指摘されている働きがいやエンゲージメントの観点からとらえるとともに、若手社員を含む優秀人材の定着を促進するリテンション(定着)・マネジメントの観点から具体的な対応策をお話しいただきました。

 

その中で、山本氏は、新型コロナウイルス対応のためのテレワークによるコミュニケーション不足や働きがいの低下を危惧します。近年、従業員エンゲージメントは、処遇以外にも社員を会社につなぎとめ、定着(リテンション)に結び付く方策として重視されていますが、日本は国際的にみても低い状況にあります。リテンションは、高業績人材がいつでも他社に流出する可能性がある現代において、いかにしてこれを実現するかが、リテンション・マネジメントいう形で重要視されていると山本氏は語ります。特に、近年の人手不足下においては、①福利厚生から人的資源管理へ、②間接性から直接性へ、という傾向があり、働き方改革なども交え、組織としての重要度が挙がっているといいます。また、今後は①優秀な若手人材の採用が困難な中、リテンションがより重要になる、②他の業界の成功例も参照しつつ、特に、働き方改革の施策とリテンション・マネジメントの連動性を考慮することは、リテンションに効果的、③統計データ等では効果がみられない施策でも、対象を絞り、対象の特性に合わせて実行することでリテンションの効果をあげることがあるという点をまとめとして触れられました。

 

次に、『組織社会化と若手社員のパフォーマンス発揮:エントリーマネジメントのあり方』と題して、学習院大学経済学部教授の竹内倫和氏よりご講演いただきました。竹内氏は、若手社員の定着を検討する上でのキー概念として、組織社会化とエントリーマネジメントを挙げ、その重要性について理論・事例両面からお話しいただきました。

 

組織社会化とは、「組織構成員として参加するのに必要な態度、行動そして知識を個人が獲得していく過程」などと定義づけられます。そして、それは望ましい従業員態度の向上

組織コミットメント(会社への一体化意識)、職務満足、モティベーション、従業員の職務成果(パフォーマンス)の向上、従業員の早期離職の抑制など、多くの効果をもたらすと竹内氏は指摘します。しかし、それを実現するのは容易でないために早期離職が発生し、組織にとっても若者にとっても問題があるとされます。だからこそ、組織社会化について検討する意味があるとも言えます。竹内氏は、組織社会化には「コンテントアプローチ」(組織社会化過程で新規学卒者がどのような知識や態度を学習すべきか)と「プロセスアプローチ」(どのようなプロセスで新規学卒者が組織に適応するのか)があるとし、前者は「組織」「職場集団」「仕事」等を学ぶことに意味があり、後者はリアリティ・ショックによる幻滅を回避するためにも、RJP(realistic job preview)手法(仕事内容や組織(企業)の状況について、良い事も悪い事も正確に伝えて、募集活動を行う手法)が重要で、それによりエントリーマネジメントの質が高まると述べます。また、企業においてOJT・OFFJT等を行うことが組織社会化を促進し、それが個々人の行動の質を高めるため、さまざまな形態を通じ働きかけを行うことの重要性を事例も交えご説明いただきました。

次に、実践事例として、『社員の「やりたい!」を叶えるウェルネス経営~健康を通じた人と社会のしあわせを目指して~』と題し、株式会社丸井グループ 執行役員・ウェルネス推進部部長・同社産業医の小島玲子氏よりご講演いただきました。

 

小島氏は、同社の健康経営のキーワードとして「インクルージョン」を挙げます。それにより、「病気の人」「リスクが高い人」だけでなく、全員が今よりもイキイキすること、さらには、社会のイキイキにつなげることを目指しています。そのため、同社では、健康という言葉に付きまといがちな「病気の予防」「個人の問題」というイメージではなく、「今より活力高くしあわせに」、という価値観を伝えるため、社員の発案でウェルネス経営と呼称しています。活動は、①手挙げ式のウェルネス経営プロジェクト、②トップ層対象プログラムが特徴です。前者は、社員の公募でメンバーが選定され、今や社内の一番人気プロジェクトになり、取り組みは社内にとどまらず、地域社会や他社とのコラボなども実現し、それが自己効力感向上や組織活性化につながっています。また、このプロジェクトは近年若手社員の参画が多くなり、新型コロナウイルス拡大期にも取り組みが継続していると言います。後者は部門長以上のトップ層向けのプログラムで、参加者ご本人のみならず、ご家族や部下にも好影響を及ぼしているといいます。その上で小島氏は、これらのプロジェクトを通じ、「個々の職場ではなく全社横断プロジェクトだからこそ出来ることがある」「今だからこそ「社会のお役に立ちたい」と思っている社員は多い」という気付きを得たとまとめられました。


 その後、チャット機能を用いた質疑応答の時間では、活発な意見交換がなされ、定例セミナーとしては初の試みであるオンラインセミナーは盛況のうちに幕を閉じました。

 

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