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2020年11月17日

2020年11月12日開催 定例セミナー「最新理論から考えるこれからの健康いきいき職場づくり」サマリーをアップしました!

2020年11月12日(木)、「最新理論から考えるこれからの健康いきいき職場づくり」を開催いたしました。同セミナーはオンラインセミナーとして実施され、多くの方々にご参加いただきました。今回は、ポストコロナにおける働き方の変革、働きがいを向上させるためのアプローチ法、中長期的な企業経営のあり方について、『主体的朗働学』『心理的柔軟性』『サステナビリティ』等をキーワードとして検討しました。

これからの健康いきいき職場づくりへの“理論”の貢献ー主体的朗働学の創生に向けてー
慶應義塾大学 総合政策学部 教授 島津明人氏

 冒頭、「職業生活を通じてどのようにウェルビーイングを発展させるか?」と問題提起していただき、その鍵となるのが「主体的朗働」であるとご紹介いただきました。
 第4次産業革命を迎えた現代では、デジタル革新により、いつでもどこでも仕事をしなければならない「牢働」環境となる危険性が高まっていることをご指摘いただきました。さらに、コロナ禍によって定着しつつあるテレワークという働き方は、自己決定理論における3つの心理的欲求(有能さ・自律性・関係性)が満たされにくい状況であるそうです。
 コロナ禍はピンチである一方で、これまでの画一的な働き方を見直すチャンスでもあることから、健康でいきいきと働くことをあらためて考え直す必要があることをご指摘いただきました。

主体的朗働学の実現へ
東京大学大学院 経済学研究科 准教授 稲水伸行氏

 はじめに、近年の働き方・組織の在り方の変化について企業事例からご解説いただきました。サイボウズ株式会社では、育自分休暇制度などの新たな人事制度策定に加えて、働き方の多様化を受け容れる風土づくりを行ったことが特徴として挙げられるそうです。
 これからの働き方における「組織」とは、「動的(ダイナミック)に変化する組織参加メンバーの結節」であるとご提言いただきました。さらに、「主体的朗働」とは①見通し、②やり通し、③風通しがあることだと解釈できるとし、組織での「協働」のためには①共通目的、②貢献意欲、③コミュニケーションが揃うことが重要であるとご解説いただきました。
 今後は、主体的朗働の実現を企業としての競争力につなげていくため、データ分析の革新が求められるとご指摘いただきました。

新しい働き方を支える心理的柔軟性
早稲田大学 人間科学学術院 准教授 大月 友氏

 冒頭、テレワークなどの新しい働き方が定着しつつある現代は「前例踏襲が通用しない柔軟性が求められる時代」であり、不安・怒り・無気力・おっくうなどの心理的要因によるバリアが生じやすいとご指摘いただきました。
 そのような状況下でいきいきと働くためには、心理的柔軟性(さまざまな心理的要因によるバリアから距離をとり、大切にしたいことに沿った選択をすること)が求められるとご提言いただきました。心理的柔軟性とは、気づく・オープン・コミットのスキルに整理することができるとのことです。詳細については動画(
CBSチャンネル はたらく with ACT!)を交えてご説明いただきました。
 産業領域における心理的柔軟性モデルは、攻め(人材育成・組織開発)と守り(メンタルヘルス対策)の双方をシームレスに扱うことのできる"Life Skill"であるとし、今後さらなる効果検討が求められているとご解説いただきました。

大月友先生のYouTubeチャンネルは
こちら
日本生産性本部メンタル・ヘルス研究所では、大月友先生と共同開発した心理的柔軟性向上プログラムのトライアル参加組織を募集しています。詳しくはこちら

企業価値と健康経営~サステナビリティとDBJ評価認証型融資の視点から~
株式会社日本政策投資銀行 サステナビリティ企画部 朝日春佳氏

 はじめに、日本政策投資銀行では「責任ある金融」として、人的資本に着目した健康経営格付などのDBJ評価認証型融資を行っていることをご紹介いただきました。昨今、投資家のなかでは、経営をより長期的な目線で捉え、サステナブルな価値を評価し投資する「ESG投資」(E:環境、S:社会、G:ガバナンス)への関心が高まっていることをご解説いただきました。
 さらに、健康経営と企業価値との関連についてもご紹介いただきました。健康経営を推進している企業ほど株式市場についても優れたパフォーマンスを発揮していることや、メンタルヘルス休職者比率と売上高比率の関係について、ご説明いただきました。
 今後は、ビジネスモデルの持続可能性への注目がさらに高まるであろうとし、どのようにして経営戦略にESGを組み込むかが経営者にとっての課題であるとご提言いただきました。

パネルディスカッション・質疑応答

 パネルディスカッションおよびチャット機能を用いた質疑応答では、さまざまな議論が行われました。

 「主体的朗働学という研究領域を立ち上げた背景」についてのご質問に対しては、島津先生より「AIやIoTの発展などにより便利な世の中へ変わっていくなかで、我々の存在や職業、働き方がどのように変わっていくのか、ミクロからマクロまで俯瞰的に捉える必要があると考えていた。誰にとっての"well-being"なのか、企業や職場は誰のためのものなのか、議論を深める必要がある」とご回答いただきました。

 「現代における"組織"の在り方」についてのご質問に対しては、稲水先生より「多くの企業は、ビジネスモデルを大きく変えていく時期にある。働き方改革の流れにフィットする従業員もいればフィットしない従業員もいる。それをどのように捉えて対応していくかが次の課題になる」とご回答いただきました。

 「心理面からみた、働く人の"組織"との向き合い方」についてのご質問に対しては、大月先生より「特に日本人は責任に対する恐怖が生まれやすく、自分で考えて自分でやっていくことを求められると動けなくなる傾向がある。重要なのは、自分でやったことが自分に返ってくるというシビアさや恐怖感とどう向き合うか。失敗や挫折との付き合い方を学ぶ機会を企業側から提供することも求められる。個人が組織の変化にどのように向き合うかが大切である」とご回答いただきました。

意見交換

 グループごとのブレイクアウトセッションでは、さまざまな意見交換が行われました。

 ご参加の方々からは 「会社側に健康経営の価値をどのように伝えるか、管理職の抵抗やバリアをどう取り除くかが課題と感じている。変化があるときには"対話の力"を活かしていきたい」「閉塞感があるなかでも、ちょっとした雑談の仕掛けづくりなどから実践していきたい」といったご意見・ご感想をいただきました。

  最後に、事務局より現在募集中のActive Work Place研究会(第8期)についてご案内し、本セミナーは終了しました。

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