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イベント・セミナー(共通)イベント・セミナー(共通)4月定例セミナー「サマリー」公開しました - 2014/05/14

定例セミナー 「企業経営から見た健康いきいき職場づくりの役割」開催!

 去る425日、生産性ビル(東京・渋谷)にて、健康いきいき職場づくりフォーラム定例セミナー「企業経営から見た健康いきいき職場づくりの役割」を開催し、多数のご来場をいただきました。当日は、川上憲人先生(東京大学大学院教授)の講演ビデオ「健康いきいき職場づくりとは」を上映したのち、島津明人先生(東京大学大学院准教授)より「ワーク・エンゲイジメントに注目した組織活性化」と題してご講演をいただきました。その後、天野メンタルヘルスコンサルティング代表の天野常彦氏、トヨタファイナンス株式会社人事部部長の矢田真士氏より、企業経営と健康いきいき職場づくりの結び付け方の事例をご紹介いただきました。セミナー後半では、島津氏、天野氏、矢田氏にご登壇いただき、取り組みの進め方や留意点、経営の巻き込み方など、より具体的視点での質疑が交わされました。

ワーク・エンゲイジメントと職場の活性化の関連とは?
島津先生より、ワーク・エンゲイジメントに注目する世間的な背景、概念の紹介、組織の活性化との関連づけについてお話しいただきました。失業率高止まり、組織活力の低下などの一方で、意思決定のスピード化に対応するには、個々人が決められた仕事をこなすのみではなく、先取りした対応をする必要があること、それに並行してメンタルヘルス対応も、従来の治療中心の考え方に加えて、個人や組織の強みに着目した対応をとることが要請されていることをご説明いただき、これらの状況を結節する概念として、ワーク・エンゲイジメントがあるご紹介いただきました。

ワーク・エンゲイジメントとは、①仕事に誇り(やりがい)を感じ、②熱心に取り組み、③仕事から活力を得て活き活きしている状態とされ、バーンアウトやワーカホリックとは異なり、労働を快く行い、活動水準も高いものとされています。ワーク・エンゲイジメントが高まる効果としては、研究実績としては、接客業でのリピーター率向上、規定外の気の利いた行動の増加、上司から部下へのフロー状態の伝達などがあります。これを組織として担保するには、仕事の要求度の低減だけではなく、仕事の資源(作業レベル、部署レベル、事業場レベル)の向上が不可欠であり、そのためのポイントとして、①「活性化」という共通目標の下での産業保健部門と経営・人事部門との連携、②継続的な対応のための体制整備、③参加型対策、④スモールステップ方式での実施可能な活動からの積み上げ、⑤目標志向型の対策、⑥組織や個人の有する「強み」への着目、「弱み」の「強み」への転換のための対策、が挙げられました。浸透、チームワークやリーダーシップへの着目、経営陣との対話などが挙げられました。


メンタルヘルス対策の経営効果~天野常彦氏の実践より~

続いて、組織における実践事例として、天野メンタルコンサルティング代表の天野常彦氏より、天野氏がかつて社長を務めたオリンパスソフトウェアテクノロジー社での活動をご紹介いただきました。天野氏は、着任当時の状況(主力製品の出荷遅れ、離職率上昇)への対応のため、体制の立て直しに着手しました。その際、アブセンティズム(休職による経済的損失)、プレゼンティズム(生産性低下による経済的損失)を数値化したうえで、これらのコストの削減のためにメンタルヘルス対策を取ることが、経営への貢献につながるとして、対策を検討したそうです。

そのために、全社員面談(タウンミーティング)・社員アンケートで問題を分析し、①事業戦略の課題、②社内制度の課題、③企業文化の課題に絞り込み、さらにはストレスの根源としての人間の防衛本能を和らげ、ストレスに抵抗するための「首尾一貫感覚」を鍛え、幸福ホルモンと言われる「オキシトシン」を増やすための施策を実践しました。

具体的には、①就業規定などの社員参加型での改定による働きやすさの向上、②成果の見直しによる評価制度の変更、③コアコンピタンス見直しによるキャリアパスの多様化、④企業文化の「互助」への改革、⑤メンタルケア相談室の設置を行い、それをメンバーに発信し、浸透していくことを通じ、休職者減、生産性向上、顧客満足度向上、社員満足度向上、受注金額増などを達成したとのことでした。

 

企業文化変革と健康いきいき職場~トヨタファイナンス社の事例より~

次に、トヨタファイナンス株式会社で人事部長として企業変革を担われている矢田真士氏より、取組みの方法や大切にしているポイントなどをお話しいただきました。同社では、人材マネジメント上の方針として「人を大切にする」を基盤とし、そこにフェアネス、多様性、人材育成などを柱にした取り組みを行っているそうです。この取り組みを進めるに当たっては、まずトップ層に理解を得るべく、「オフサイトミーティング」を何度も行い、その中で自分たちでできることへの気づきを得て、役員層の社員を見る目線が変わったことが、推進への追い風になったそうです。

具体的には、「人を大切にする会社」として、仕事を楽しむ、仕事にやりがいを持つ、会社にプライドを持つことに働きかけを行い、社員一人ひとりの資質を最大限に活かし、それによって個人と組織の成長を実現し、組織開発につなげていこうというのが、同社の目指す健康いきいき職場とのことです。その際には「個人の健康を含めた能力開発」「機能する職場の実現」がキーワードとなり、「メンタルヘルス対策」という言葉がなくなることが理想だと矢田氏は語ります。

そのために特に重視されるのが「対話」で、「ありたい姿」「想い」を個々人や職場で結実させる対話を通じ、問題意識や価値観の共有、そこから生まれた解決策への主体的な取り組みを行っているそうです。また、その推進にあたり、「いきいき度診断」を昨年度から行い、それによって職場環境の見える化を図り、職場マネジメントによって仕事の資源の充実を進めることで、職場環境改善を図ることが可能であることへの確信を得たので、今後もこの取り組みを進めたいとのことでした。

 

質疑応答より

この後、事例の発表をしていただいたお二人に対し、島津先生から質問を投げかける形で、さらに施策についての解説をしていただくセッションを行いました。主なやり取りは、以下の通りです。

 

Q)人事部という立場から経営をどう巻き込んだか

矢田氏)まだ成長途上の会社でもあるので、どちらかというとポジティブに「よい会社を作っていこう」というアプローチで行った。

Q)数値化することの意味は?

矢田氏)うすうすマネージャー層もわかっていることを数値化することで改めて向き合い、受け止め、変わるきっかけにすることができる。だからこそ、客観的な数値が大事だと思う。

天野氏)親会社の役員会で話してもメンタルヘルスという言葉では通用しなかった。説得して新しいことを始めるには、逸失利益の大きさを見える化することが必要だった。

Q)施策の優先順位の付け方は?

天野氏)「簡単さ」「最大の効果」をマトリクスに落とし込み、「すぐできる」「みんなでできる」を重要視した。

矢田氏)「正しいリーダーシップ構造」に即して、上から下に降ろしていくのを基本にした。その際、「対話」「自責(自発)」を基本にするのは共通項としていた。納得感を発生させるには、主体性が芽生えるのを待つのが重要。

Q)継続性を保つための工夫は?

矢田氏)イベントのように様々な施策を打つのは好ましくなく、マネージャーの想いが伴うこと、それによってメンバーの活動を本気でサポートすることができるかが大切。

Q)「目の前の仕事に一生懸命」という言葉があったが、どういう意味か

天野氏)仕事は人のためにやるのではなく、自分のために行うもので、それが理解できてくると、一人ひとりの納得性も高まる。だからこそ「一生懸命やってありがとう」を大切にしており、職制を通じ、全社員へ呼びかけていた。一方で、仕事は趣味ではなく仕事なので、会社としてのポリシーを掲げ、そこに合わない場合は退職されるのもやむなしという面もある。ただ、出戻りも歓迎している。

Q)仕事を楽しむというメッセージが印象に残ったが、どうやって実現する?

矢田氏)トヨタでは、カイゼンは単なるコストカットではなく、付加価値をつけるためのチーム活動と位置付けられており、人間性尊重の要素がある。そこで、学びやケア、切磋琢磨することの良さを学んでもらえればと考えている。

 

今回のお二人の取り組みに共通するのは、単に不調者を減らすことだけが目的なのではなく、損失を減らし、利益をさらに上げていくために有効な手段として、職場改善に取り組んでいるという点でした。そのために、数字で説明すること、社内を説得することなどがポイントとしてあるように感じられました。企業風土や置かれている環境は各社で違えど、これらの要素は共通の重要事項であることは間違いありません。

 

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