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2022年04月27日

2022年2月25日開催 冬季シンポジウム「健康いきいき職場づくりの“これから”を考える ―Society 5.0 時代 の 健康いきいき職場づくりに向けて―」サマリーをアップしました!

2022年2月25日(金)、冬季シンポジウム「健康いきいき職場づくりの“これから”を考える ―Society 5.0 時代 の 健康いきいき職場づくりに向けて―」を開催しました。本セミナーはオンラインで実施され、約280名もの方々にご参加いただきました。
健康いきいき職場づくりフォーラムでは、設立10年の節目と社会情勢の大きな変化を受け、各界の有識者からなる「健康いきいき職場づくり“これから”検討会」を設置しました。本シンポジウムでは、本検討会での討議を通じて浮かび上がってきた、労働者個々人・職場・企業・社会の各レベルでのウェルビーイングの実現に向けた、「健康いきいき職場づくり」の未来像について検討しました。

講演

東京大学 大学院医学系研究科 教授 川上 憲人 氏
「健康いきいき職場づくり“これから”検討会の取り組み」

冒頭、川上先生より「健康いきいき職場づくり“これから”検討会」の立ち上げの経緯および検討会での議論を取りまとめた報告書の概要についてご紹介いただきました。

この10年間の社会の大きな変化とコロナ禍により、企業や働き方の変化のスピードは加速し、さまざまな課題が生じました。また、経営への産業保健や健康づくりの統合も急速に進んでいる一方で、多くの課題が挙げられています。
本検討会では、そのような課題について議論・分析したうえで、「“これから”の健康いきいき職場づくりの在り方」として重要な点を3点挙げています。
1)身体的・精神的・社会的なウェルビーイング、この3つのウェルビーイングの実現を目標とすること。
2)サプライチェーンや地域といった、企業組織を超えた活動・健康づくりを進めていくこと。
3)経営者だけでなく管理職や労働者など、関係者全員が参加できる活動を進めていくこと。
これらは非常に重要な点であり、これからのフォーラムの目標としても適切なものであり、報告書の最後には、フォーラムの新しいミッションやビジョン、期待に応えるための活動の在り方をまとめています。


その後、フォーラム事務局の本間より、検討会の報告書の要点についてご説明いたしました。
「健康いきいき職場づくり“これから”検討会」および報告書

厚生労働省 労働衛生課 課長 髙倉 俊二 氏
「今後の労働衛生行政と健康いきいき職場づくりへの期待」

冒頭、労働衛生の現状として、各種統計資料より労働災害による死亡者数の減少、一般定期健康診断における有所見率の増加、精神障害等の労災補償の請求件数の増加についてご紹介いただき、「労働者の置かれている環境が変化していることを反映している」とご指摘いただきました。

また、令和2年度に改正した「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(Total Health Promotion; THP)についてご解説いただきました。
改正により、①労働者「集団」への視点を持つこと、②事業場の特性に合わせた取り組みを実施すること、③取り組みの内容ではなく取り組み方法を規定していること、④医療保険者と連携して取り組むこと、の4点が大きく変わったとのことです。

そのほか、働き方改革実行計画および関連法、労働者の心の健康の保持増進のための指針、ストレスチェック制度、テレワークガイドライン、メンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」、職場における心とからだの健康づくりのための手引きなど、幅広い内容についてご紹介いただきました。

最後に、「産業保健活動の推進にあたっては、メンタル不調のある方への早期対応に限らず、より一歩進んだ一次予防に力を入れるよう意識している」としお話いただきました。「その過程においては、労働者が参加できる仕組みづくりや社会のさまざまなリソースの活用が重要」とし、「それらの連携の広がりが、本フォーラムの目指している“すべての労働者の主体的な参加”につながるだろう」とご提言いただきました。


問題提起「新しい“健康いきいき職場づくり”の実践を目指して」

慶應義塾大学 総合政策学部 教授 島津 明人 氏

「健康いきいき職場づくり」のキーワードである「ワーク・エンゲイジメント」およびポジティブなメンタルヘルスについてご解説いただきました。

ワーク・エンゲイジメントとは、①仕事に誇り(やりがい)を感じ、②熱心に取り組み、③仕事から活力を得て活き活きしている状態、この3つの要素から構成されている概念です。
バーンアウト/ボアアウト(退屈症候群)、ワーカホリズムなどの概念と比較すると、ワーク・エンゲイジメントは、快(ポジティブな認識)であり、活動水準が高く、現在や将来に向けてエネルギーを使っている、といった点に違いがあるとご解説いただきました。

コロナ禍により働き方が変化したことで(第8回働く人の意識調査(日本生産性本部, 2022))、「人間の持つ心理的欲求が満たされにくい状況になっている」とし、これからの働き方においては「分散した場所であっても、各自が自律しながら、協働し、個人の能力を発揮するための職場環境づくりがより重要になっているのではないか」とご提言いただきました。
ウィズコロナ/ポストコロナの働き方では、①エンゲイジメントとボアアウトの問題が生じ、信頼がより重要になったこと(自律)、②働く場所と時間の分散が起きたこと(分散)、③誰とどのようにつながるかが重要になったこと(協働)、についてご解説いただきました。

丸井グループ 取締役執行役員CWO/専属産業医 小島 玲子 氏

はじめに、丸井グループのウェルビーイング経営は、WHO憲章による「健康」の定義(Well-being ※)から始まったことをご紹介いただきました。
丸井グループでは、「高リスクの人」や「病気の人」だけではなく「すべての人が今よりもイキイキすること」を掲げているとのことです。
※健康の定義(WHO憲章, 1946)(日本WHO協会訳)
 「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、
 肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態
(Well-being)にあることをいう」

健康経営の取り組みとしては、①全社横断Well-being推進プロジェクト(一般社員)、②トップ層向けレジリエンスプログラム(役員・管理職)の二大柱で行っているとご紹介いただきました。
実際に、所属長がレジリエンスプログラムに参加し、ウェルネスの取り組みが活発な事業場においては、ストレスチェックの組織分析において、「職場の一体感」や「個人の尊重」などの指標が改善したとのことです。

また、ESGの取り組みが加速するにつれ、「ESGプレミアム」が拡大していることから、企業価値向上にも貢献しているとご紹介いただきました。
さらに、2021年5月の新中期経営計画において、サステナビリティとWell-beingを事業目的に定めたことをご紹介いただきました。非財務指標(ウェルビーイング)を目的とし、その結果としての財務指標を設定したことに特徴があるとのことです。

最後に、「人的資本、非財務、ESG、Well-beingの重要性が高まるなか、これからの健康づくりの在り方も変わっていくのではないか」と問題提起いただき、「中身の深化、対象の拡がり、経営との統合などが重要な点になるだろう」とご提言いただきました。

旭化成労働組合 中央執行委員長 小林 竜介 氏

旭化成労働組合におけるミッション(存在意義・使命)は「ひとり一人が「豊かで充実な人生」を歩む手助けをします」、ビジョン(中期目標)は「(1) 働き甲斐を高めるため、「強い現場」の実現をめざします」「(2) 生きがいが実感できる「ワーク・ライフ・バランス」の実現をめざします」であることをご紹介いただきました。
組合員ひとり一人が上記のミッション・ビジョンを体現することを目指しているとのことです。

これらのミッション・ビジョンのための活動として、ひとり一人の対話活動や、組合員意識調査、職場自治活動を行っていることをご紹介いただきました。
なかでも、職場ごとの課題を職場単位の労使で議論し解決を図る「職場自治活動」に力を入れており、この活動で得られた現場の声や知恵をさらに上の階層(経営各層)に届ける「経営対策活動」もあわせて行っているとのことです。

これからの健康いきいき職場づくりについては、①職場の再定義とコミュニケーションの再構築が求められること、②職場づくりの担い手を支援する必要があること、③事業構造の転換や価値観の多様化への適応が求められること、以上の3点について問題提起いただきました。

武蔵大学 経済学部 教授 森永 雄太 氏

冒頭、「ウェルビーイング経営」について、仕事の意欲や集団への愛着、肉体的・精神的健康などの「ウェルビーイング」に対して、①経営管理・人事管理、②自己管理の2つの側面からアプローチする考え方であると捉えることができるのではないかとご説明いただきました。

施策を組織内で実践していくなかでの「バラツキ」の問題に触れ、人事施策方針は組織内で異なって伝わり「実践」されるケースがあることから、均一に伝えるための「弁別性」「一貫性」「合意性」に注目する必要があると問題提起いただきました。

特に一貫性については、①横の意図の一貫性、②縦の意図の一貫性の2種類の意図の一貫性を高めることが重要であるそうです。 ①横の意図の一貫性を高めるためには、部門を連携した取り組みにすること、②縦の意図の一貫性を高めるためには、実践・翻訳・適応/導入が求められるとのことです。
「縦と横の糸(糸)を上手に織ることが「強い」実践につながる」とご提言いただきました。


後半では、いただいたご質問をもとに「新しい“健康いきいき職場づくり”の実践を目指して」と題して、ストレスチェックを有効活用するための工夫や、一人ひとりが当事者意識を持って主体的に取り組むための具体策、ダイバーシティへの対応等、さまざまな側面からパネルディスカッションを行いました。

最後に、東京大学川上先生よりご挨拶をいただき、盛況のうちに閉会しました。


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