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2019年01月07日

「冬季シンポジウム2018」サマリーをアップしました!

2018年12月14日(金)に浜離宮朝日ホール 小ホール(朝日新聞社 東京本社内)にて健康いきいき職場づくりフォーラム主催『冬季シンポジウム2018』を開催しました。
今年度はテーマを『サステナビリティを高める“健康&生産性”』と題し、学識者から企業経営者まで幅広い分野から論客を招聘し、講演やパネルディスカッションを通じて多彩な意見・問題提起がなされました。年末でご多用の折にも関わらず、当日は約250名にご参加いただき、盛会となりました。

 本シンポジウムのテーマでもある『サステナビリティ』は近年、各界で取り組みが加速しています。2015年に持続可能な開発目標(SDGs)が国連で採択された後、政府は内閣総理大臣を本部長とする「SDGs推進本部」を設置し、推進に向けた基盤整備に取り組み、2018年6月には『拡大版SDGsアクションプラン』を策定しました。現在では地方自治体でもSDGsを自治体運営やまちづくりに取り入れる例が増えつつあります。
 また資本市場に目を移すと、サステナビリティの観点から、金融機関や機関投資家などがESG投資やSDGsへの取り組みを拡大する動きが見られます。企業は資本市場との対話でも持続的な成長戦略としての人財や健康への考え方、取り組み、投資が問われています。
 他方、人口減少はわが国最大の社会的課題となっており、働く人々が健康を維持することで労働の観点でも持続可能性を高め、生涯現役社会を実現することが求められています。
 今回のシンポジウムは働く人・組織、ひいては社会のサステナビリティを高める健康経営の意義や効果について議論し、よりよい経営を支援することを目的に開催いたしました。

 冒頭、日本生産性本部ICT・ヘルスケア推進部長 広江秀樹より主催者挨拶、そして東京大学大学院教授 川上憲人様よりフォーラム代表挨拶および健康いきいき職場づくりの役割をお話いただきました。川上先生からはフォーラム設立後6年間の取り組みを紹介いただき、またサステナビリティの推進において健康いきいき職場づくりがどのような分野で貢献できるかお話いただきました。
 具体的には健康いきいき職場づくりはSDGsにおける『3.すべての人に健康と福祉を』と『8.働きがいも 経済成長も』に貢献し、その推進にあたっては経営と健康管理が協力し、それぞれの領域から従業員の心の健康にアプローチすることが重要だとご示唆をいただきました。


代表挨拶(東京大学大学院 川上憲人教授)


 続いて全日本空輸株式会社 取締役常務執行役員 國分裕之様より『ANAグループの人財戦略~あんしん、あったか、あかるく元気!な「人」の力を最大限に活かし、持続的に成長する~』と題した講演をいただきました。
 全日本空輸様では本シンポジウムテーマの一つである健康経営のみならず、働き方改革やダイバシティ&インクルージョン、イノベーションなど人に基盤を置いた各種施策を推進されており、ご講演のなかで國分様より各施策に関する詳しい取り組み内容やそれぞれの進捗状況・課題などをご紹介いただきました。
 講演テーマの『あんしん、あったか、あかるく元気!』はANAグループ共通の価値観を指していますが、この標語は若手社員主体のプロジェクトで「社内で大切にされていること」を徹底的に議論して制定されたものだとのエピソードの紹介がありました。この標語にも表れているように、全日本空輸様では褒める文化の醸成や企業内保育所の開設、アスリート社員の活躍など、多様な観点から従業員が働きやすく、自分達の会社・仕事に誇りをもっていきいきと働ける環境づくりを推進されていることが紹介され、参加者の注目を集めていました。


■講演(全日本空輸株式会社 國分裕之氏)


 続いては、日本サステナブル投資フォーラム 会長 荒井勝様より『ESG投資、SGDsの視点からみた企業のサステナビリティ』と題した講演をいただきました。荒井様は大和証券株式会社にてご活躍後、国連責任投資原則(PRI)の理事などを務め、現在はサステナブル投資を普及・発展させる日本サステナブル投資フォーラムの会長を務められています。
 ご講演ではまさしく投資家の目線から『投資家が健康経営に注目する背景』や『健康経営に企業が取り組む意義』をお話しいただきました。ご講演では、既にESG投資が世界の投資市場においてメインストリームなっており、我が国においてもサステナブル投資残高は207兆円に上り、この3年間で約8倍に増加している背景を受け、企業の将来価値判断においては財務結果ではなく、人財の確保や環境・社会課題対応、技術革新など結果を生み出す活動・システム・資本・資源に関する情報が重要であることから人財戦略の一つである健康経営に注目が高まっている、とのご示唆をいただきました。
 また健康経営に企業が取り組む意義としては、ヘルスケアコストの削減のほかにも社員の生産性・企業価値の向上やリクルート面の効果などをご紹介いただきました。


■講演(日本サステナブル投資フォーラム 荒井勝氏)


 続いてのセッションではパネルディスカッションを行いました。テーマを『人と組織の健康と生産性』と題して、北里大学一般教育部 教授 島津明人様、株式会社丸井グループ 取締役専務執行役員 石井友夫様、早稲田大学教育・総合科学学術院 教授 黒田祥子様の3名にパネリストとして登壇いただき、ディスカッションに先立ちそれぞれご講演いただきました。

 冒頭、コーディネーターの島津先生から健康経営優良法人2019の認定基準にワーク・エンゲイジメントが含まれていることやパネリストの黒田先生等と取り組まれている労働生産性の寄与に向上する健康増進手法の開発など、健康と生産性の関わりについて話題提供をいただきました。


■北里大学 島津明人教授による話題提供の様子

 石井様からは『丸井グループの健康経営』と題した講演のなかで健康経営の推進体制や社内での位置づけ、各種取り組みの詳細などをご紹介いただきました。
 丸井グループ様では健康経営の取り組みから、病気の人・リスクが高い人だけでなく「全員が」今よりイキイキすることを目指されており、健康経営を人の成長を通じて企業の成長・企業価値向上につなげる経営戦略として位置づけられています。
 同社では健康経営の推進にあたっては会社公認プロジェクトを立ち上げ、公募によりメンバーを募り、若手が中心となり施策の検討・実践を行っています。そこでプロジェクトメンバーの意識と行動の変化をみていくと、自己効力感の大幅な高まりや、生活習慣の改善などの効果がみられたそうです。
 その他にも健康診断やストレスチェックといった健康データと人事評価の分析にも取り組まれており、「健康」と「実績」の相関関係を見える化し、エビデンスに基づいた具体性の高い施策展開を目指されているといったお話をいただきました。非常に多種多様な取り組みを推進されており、本サマリーでは恐縮ですが個別のご紹介は割愛させていただきます。


■パネルディスカッションの様子(写真右手より黒田先生、石井様、島津先生)

 黒田先生からは『健康への投資と生産性』と題した講演のなかで働き方改革の今後の課題や健康投資と生産性向上の関わりなどについてご発表いただきました。
 働き方改革は労働時間の短縮と付加価値の維持・向上を両立させる施策であり、従来よりも時間当たりの労働強度が増加し、心身へのマイナスの影響を及ぼす可能性があることから、そのリスクを低減するために追加的に健康資本投資が求められるとの説明がありました。
 またメンタルヘルス休職者比率が上昇した企業とそうでない企業を比べた場合に、前者は後者に比べて売上高利益率が低くなる傾向が見てとれるなど、健康投資と生産性向上に関するいくつかの研究からは、従業員の健康が企業の生産性にプラスの影響をもたらしているとの結果が出ているが、経営層の説得に向けてより実証的なデータ・検証が必要との見解を示されました。

 パネルディスカッションでは、コーディネーターの島津先生がパネリストの丸井グループ石井様と早稲田大学黒田先生に対し、発表内容に関する質問をする形で議論が進められました。石井様とは「健康経営にコミットしてもらうための経営層の説得、社員の自主的取り組みをいかに活性化しているか」について議論が行われ、トップのリーダーシップの重要性と時間をかけた粘り強い組織風土の変革が求められることが確認されました。黒田先生とは「今後の経済学と健康経営の融合の展望」について議論が行われ、健康投資と生産性の関係についてのデータ分析や研究はまだ緒についたばかりで、今後の追加的な検証の蓄積が重要であり、インサイダー・エコノメトリクス(内部者計量経済学)が今後ますます注目され、発展していく必要があることが指摘されました。

 最後に、健康いきいき職場づくりフォーラム事務局より今年度の活動報告と来年度の活動紹介をおこない、盛況のうちにシンポジウムは閉会いたしました。



【健康いきいき職場づくりフォーラム事務局より】

健康いきいき職場づくりフォーラム冬季シンポジウム2018へ、大変多くの方々にご参加いただき、誠にありがとうございました。
健康いきいき職場づくりフォーラムでは、昨今の働き方改革・健康経営などの動きも踏まえ、職場を働きやすくまた働きがいのある場所に、また個人も健康でいきいきと仕事にやりがいを持てるように、組織・個人の両面から健康いきいき職場づくりを積極的に推進して参ります。
今後もより多くの皆様に、この活動にご興味をお持ちいただき、会員として一緒に取り組んでいただけますよう、この場をお借りしてお願い申し上げます。


■大変多くの方にご参加いただきありがとうございました。

 

 

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