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2014年09月06日

8月定例セミナー「サマリー、当日資料(会員限定)」公開しました

2014年8月11日、健康いきいき職場づくりフォーラム定例セミナー「健康いきいき職場づくりへの道」が開催され、猛暑の中にも関わらず多数の方にご参加をいただきました。

今回は組織アプローチ/個人アプローチとして実践のポイントを分けて考える構成としました。組織アプローチとしては、大阪府立大学経済学部教授の北居明先生より、「組織開発の手法と効果」と題して、また個人アプローチとして、東京大学大学院准教授の島津明人先生より、「ワーク・エンゲイジメントと個人アプローチ」と題してご講演をいただきました。また、事例紹介として、株式会社ダイセル様より健康いきいき職場づくりの取り組みを含んだ、メンタルヘルスの取り組みについてお話いただきました。


組織アプローチについては、大阪府立大学の北居先生(経営学)より、組織開発の中でも特に、「対話型組織開発」を中心にお話をいただきました。対話型組織開発の手法にもさまざまありますが、その中でも最もシステム化され、事例も多い「Appreciative Inquiry(AI)」アプローチについて、詳しくお話をいただきました。
AIの特徴は、組織全体に働きかけ、組織の人に関わるプロセスの改善を目的とするところ、また、組織や人のポジティブな側面に焦点を当てた組織開発である点です。米国で始まりましたが、日本でも取り入れる企業、病院、自治体などが広がっています。
北居先生からはAIの5つの原理(以下)を中心に、実践事例を交えてわかりやすいお話をいただきました。
 ・構築主義の原理(現実に対する「意味づけ」を言葉によって創り出していること)
・同時性の原理(我々の考え、学び、イメージすることなどは、そもそもその前に発する「問い」によって導かれていること。)
 ・詩的隠喩の原理(組織はしばしば機械や生物に例えられるが、その時点で「問題解決」(悪いところを直そう)という視点に陥ること)
 ・予期成就の原理(「予言の自己成就」と同じで、「うまく行かないだろう」と思うと本当にうまくいかないこと。逆もしかり。)
 ・ポジティブさの原理(組織改善に向けた活動の勢いを維持するにはポジティブな感情と社会的つながりが必要であること)
そして、AIに終わりはなく、4Dサイクル(Discovery→Dream→Design→Destiny)を回しながら変化・拡大していくことが、組織変革活動に効果を出すために重要であると伝えられました。

個人アプローチについては、東京大学の島津先生(臨床心理学)より、ワーク・エンゲイジメントの概念の解説の後、個人でできるセルフケア、そして「仕事」だけでなく「仕事外」ことに注目したアプローチについてお話しいただきました。
セルフケアと言うと、ストレスへの気づきを促し、それに対処する方法を身に着けることが中心でした。しかし、これからのセルフケアはあえてポジティブな感情を経験できることを自分で作ったり、「ジョブクラフティング」という手法で、自分の仕事に自分で工夫を加えて面白くしたりすることで、ストレスが減ったり、仕事への意欲が増したりするのです。
また、仕事外のことに注目すると、「余暇によるリカバリー」、「コーピング(気晴らし)」、「ワーク・ライフ・バランス」の3点にまとめられます。特に、「ワーク・ライフ・バランス」については、仕事と家庭のバランスだけを見るではなく、家族のいる人の場合、家庭内でのパートナーとの関係性が仕事のパフォーマンスにも影響するため、家庭内まで対象にしていくことが求められるという貴重な示唆をいただきました。


企業事例の紹介として、株式会社ダイセルで6月まで播磨工場長を務められた、石倉許志様よりお話をいただきました。同社では1998年のメンタルヘルス大会(主催:日本生産性本部 メンタル・ヘルス研究所)への出席をきっかけに、全社でのメンタルヘルス対策を進め始めました。そして、社長名でのヘルスケア委員会の「キックオフ宣言」などもしましたが、最初はなかなか現実が伴わなかったそうです。社内での実施当事者としても、「これをやって本当にいきいきしているのか?」という疑問があったそうです。なぜなら、対策の特徴が、CAPD(PDCAサイクルの、Checkから始まること)であり、つまりは問題点探しになっていたのです。“ダメ出し”が中心だったので、いきいきは下がる一方だったのではと思われたそうです。
そうした疑問と対峙しながら、播磨工場では、保健師の活用、基盤強化チームの編成、部門長研修の実施、そして健康いきいき職場づくりファシリテーターの配置によるいきいき職場づくりを実践されています。具体的には、保健師面談による情報収集により、多くの問題が仕事に関することでなく、人間関係、特に上司との関係が悪いことがわかり、対策が打てるようになりました。また、基盤強化チームとは、メンタル不調の社員が休職せず、簡単にできる仕事に変わることによって、また元の仕事にすぐに戻れるように配慮した制度です。部門長研修では、メンタルヘルスの問題を個人の問題でなく組織の問題と規定したうえで、部門長に事業目標を達成するための健全な組織を目指すことを確認するものです。
また、播磨工場で特筆すべき実践は、健康いきいき職場づくりワークショップを実施するファシリテーターを選任し、全職場で展開したことです。やりながらファシリテーターが参加する研修会を開いて、ワークショップでの問題点を一つひとつ解決していきました。こうして、職場発の好事例が次々に出てきています。
石倉氏からのメッセージとして貴重であったのは、「これからの組織は、10%の人が絶えず50%多く働く集団から、50%の人がもう10%効率的に働く集団を目指すこと」です。この考え方は、健康いきいき職場づくりが目指す、一人ひとりの従業員の底上げによる、個人の幸福工場、組織パフォーマンスの向上につながるものでしょう。


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