2.変化する雇用・労働環境と新しい課題

2)コロナ禍がもたらしたもの


2020年初頭から始まり、同年春の第1回目の緊急事態宣言をはじめとする幾度かの波を経つつ未だ収束しきらぬコロナ禍は、テレワークに代表される働き方の変容をもたらし、ワーク・ライフ・バランス、ひいては生活への満足度等にも大きな影響を及ぼしました[1]。その中で最も注目されるのは、テレワークの拡大等に伴い、職場でのコミュニケーションが対面前提ではなくなった点です。感染予防の観点から、いわゆる「密」を避ける必要に迫られ、空間を共にしてのコミュニケーションは避けられることになりました。その結果、これまで以上に重視されるようになったのが、オンラインを活用してのコミュニケーションです。


図表8:テレワークの主なメリット・デメリット
出典・厚生労働省「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」
第1回資料より抜粋の上改変


在宅勤務をはじめとするテレワークでは、オンラインでのコミュニケーションを駆使すること等を通じて、通勤時間の削減、自由時間の増大、それに伴うワーク・ライフ・バランスの質と量の向上、雑用や突発的な対応の減少による効率の向上、そして煩雑なコミュニケーションからの解放によるストレスの軽減等のメリットがあります。その一方で、対面機会の減少に伴うコミュニケーション不足、それらもあいまった孤立感・孤独感、運動不足、各人の業務内容が見えないことによるストレス、オンラインで「いつでもつながる」ことによる過重労働等のデメリットが発生しています。コロナ禍は本報告書執筆(2022年2月)の時点で現在進行形で進んでいるため、まだ不確定要素が多い中ではあります。しかしながら、確実なこととしては、働く一人ひとりが一つ所に集うのではなく分散して、これまで以上に自分自身で自立して、自らの業務やそれ以外の生活全般をコントロールし、自律して働くことが要請されるようになったと言えます[2]。特にコロナ禍を機に、テレワークを含む働き方改革を積極的に推進しようとしている企業では、ポストコロナにおいてもこのような変化は不可逆的なものとして位置付けられます[3]。


図表9:職場の求心力のイメージ


こういった状況に対応するために、かねてより起こりつつあった企業における従業員への関わり方の変化が後押しされることになります。企業としては、Society 5.0時代を見据えつつ、分散して働く従業員をつなぎとめ、かつ心身の健康を増進させるとともに高いパフォーマンスを発揮してもらうことがより重要となります。そのために、従業員の自立と自律を支援しつつ、他者や社会とのつながりや絆を希求する関係性への欲求に配慮することで孤立を防止し、職場として成果を上げるため適宜協働を促すことで、自律・分散して働いていてもなお職場に求心力が働くようにすることが、これまで以上に必要となってきます。また、現場のかじ取りを託されたミドル・マネージャーにおいては、従来からプレイング・マネージャーとして、プレーヤーとマネージャーの両方を担うことが求められていた上に、さらに目の前にいないメンバーの孤立を防ぎ、その成長を支援し、仕事の上でも成果を上げるという、これまで経験したことのない課題に向き合うことが求められるようになったと捉えられます。

それでは、このような環境下で、「これからの健康いきいき職場づくり」はどのように位置付けられることになるのでしょうか。


[1] 代表的なものとしては、内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(20206月以降4回にわたって実施)(https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/index.html)や、日本生産性本部「働く人の意識調査」(20205月以降8回にわたって実施)(https://www.jpc-net.jp/research/search.html#select_sort)がある。

[2] 池田浩「産業組織心理学から紐解くテレワーク時代のマネジメント」(生産性新聞連載)第3回より。一般社団法人チーム力研究所サイト内に同連載の掲載あり。

[3] ただし、そのような社会にすべての人が一気に移行するわけではない点については留保が必要と言える。例えば、(公財)日本生産性本部の「働く人の意識調査」でも明らかなように、テレワークの導入率は2割程度を推移している。そのため、すべての職場で導入されるということではなく、業種、企業規模、地域等によってその実態は大きく異なる。また、同じ企業の中でも、例えばオフィス系部門と工場部門、正社員と非正規社員では置かれた環境が変わってくる。
上記調査の最新版についてはhttps://www.jpc-net.jp/research/detail/005680.htmlを参照。

 

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