3.「Society 5.0時代・ポストコロナ時代の健康いきいき職場づくり」に向けて ~従業員の健康づくりの経営への新しい形の統合に向けて~

2)取り組みの「場」の拡大:企業・組織を超えた活動の拡がりへ


次に重要となるのが、取り組みの「場」の拡大です。前項でも触れたように、ウェルビーイングの実現は特定の企業・組織内で完結する話ではありません。特に、ビジネスにおいて接点を持つステークホルダーをも視野に入れた形でスコープを拡大した活動が展開されることが、社会全体でのウェルビーイング実現の上でも有益です。例えば、サプライチェーンの上流・下流工程や、地域企業との関係性を見直すことで、「健康いきいき職場づくり」の取り組みが社会において共有されることにつながります。それは、第
2章で触れたサプライチェーンの人権デューデリジェンス重視の視点にも関係します。


表14:取り組みの「場」拡大のイメージ


このような取り組みは、ESG投資の観点では、すでにE(環境面)への配慮という文脈で、サプライチェーンをも巻き込んだ形での対応が要請されるようになってきています。これに符合する形で、健康経営においても、優良法人認定のための健康経営度調査において、パートナーシップ構築宣言等を通じたサプライチェーンの健康経営の取り組み支援の有無や、自社製品・サービスを通じた社会全体の健康増進を問う設問が設定されるに至っています[1]。また、パートナーシップ構築宣言については、経済産業省においてもポータルサイトで宣言企業を公表し、各種補助金での支援にも着手しています[2]。また、取引先の職場環境や働き方への配慮を通じ、サプライチェーンの品質向上をウェルビーイング向上にもつなげていこうという取り組みも徐々にではありますが始まっています[3]


同様に、地域の活性化や、近隣地域に所在する中小企業の取り組み支援への企業としての貢献も進んでいます。健康経営においても
2021年度から、健康経営優良法人(中小規模法人部門)の中から、「健康経営優良法人の中でも優れた企業」かつ「地域において健康経営の発信を行っている企業」を「ブライト500」として認定するようになりました[4]。また、自治体や地方銀行、商工会議所、地方の中核企業、協会けんぽ等が担う形での地域・職域の連携による支援も展開されつつあります。この中では、実践ノウハウの共有や推進人財の養成支援、取り組みに対してのインセンティブの設定等、多様な取り組みが始まっています[5][6]。また、「健康いきいき職場づくりフォーラム」においても、例えば自社の交流イベントを社内で手挙げ式の取り組みとして「いきいき」を高める機会にしつつ、社外にもイベントを通じて自社の健康施策をも広く公開することで交流の機会につなげる事例や、自社内の活性化プロジェクトを地域に展開する事例、自社の健康経営に関する取り組み紹介を通じた地域・中小企業の啓発活動等、地域社会というステークホルダーを意識した企業の取り組みもなされつつあります。また、コロナ禍による在宅勤務の拡大に伴い、健康施策において従業員本人に加え、ご家族の健康増進により留意する動きも出始めています。

ただし、これらの動きはまだ端緒についたばかりです。従って、今後リソースがない中で取り組みを浸透させることや、限りあるリソースを有効活用すること、ウェルビーイングの実現のように、より広範囲の健康定義の下で経営活動に組み込まれた形で取り組みが展開されること、とかく後回しにされがちな障碍者やマイノリティ等にも配慮された形で取り組みが展開されること等によって、取り組みの質と量が担保されることが要請されます。それにより、「健康いきいき職場づくり」がこれまで以上に拡大することが見込まれます。そしてその先には、「健康いきいき職場づくり」や健康経営の取り組みが、国内にとどまらず国際的な発信がなされ、取り組み企業のブランディングに寄与することで海外からの投資につながることや、概念やノウハウの輸出等といったことも視野に入ることが期待されます
[7]


 

[1] 健康経営度調査(令和3年版)Q23・24参照。調査票サンプルはhttps://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/R3_kenkokeieidochosa_sample.pdf

[2] https://www.meti.go.jp/press/2021/09/20210927001/20210927001.htmlポータルサイトはhttps://www.biz-partnership.jp/。登録社数は2022年2月時点で5968社にのぼる。

[3] 例えばhttps://www.kao.com/jp/corporate/sustainability/topics-you-care-about/procurement/procurement-cooperation/を参照。

[4] 概要についてはhttps://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin_chushokibo_bright500.pdfを参照。

[5] 取り組み事例についてはhttps://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/211006_kenkokeiei_gaiyo.pdfを参照。

[6] 厚生労働省の職場のメンタルヘルス対策のポータルサイトである「こころの耳」では、従業員規模、業種等に応じた好事例が閲覧できる。以下を参照。

https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/

[7] 取り組み事例についてはhttps://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/211006_kenkokeiei_gaiyo.pdfを参照。

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