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2022年06月01日

2022年5月23日開催 定例セミナー「ウェルビーイングと健康いきいき職場づくり ―ウェルビーイング実現への道筋と課題を考える ―」サマリーをアップしました!

2022年5月23日(月)、 定例セミナー「健康いきいき職場づくりの“これから”を考える ―Society 5.0 時代 の 健康いきいき職場づくりに向けて―」を開催しました。本セミナーはオンラインで実施され、約40名の方々にご参加いただきました。
健康いきいき職場づくりフォーラムでは、各界の有識者からなる「健康いきいき職場づくり“これから”検討会」を設置し、「これからの健康いきいき職場づくり」についての検討を行いました。
本セミナーでは、本検討会での討議を通じて重要であることが明らかになった、「ウェルビーイング」をテーマに据え、開催しました。これからの健康いきいき職場づくりにウェルビーイングがどのように関わっていくのか、従業員の健康や成長、幸福をいかにして実現するのか、また実現した先に何があるのかについて検討しました。

神戸大学 大学院 経営学研究科 教授 鈴木 竜太 氏
「ウェルビーイングを実現するマネジメント」

冒頭、近年ウェルビーイングが重視されるようになった背景として、「組織・個人・社会が渾然一体化している」ことをご指摘いただきました。
自分にとっての働きがいや生きがいといった個人レベルのものが、働くことと一体化しつつあり、企業組織としても(個人の)ライフに配慮しなければ採用や定着に影響が出るという観点から、個人の問題を企業組織が取り扱うようにもなってきました。
加えて、SNSなどの情報技術の進展が追い風となり、個人と組織と社会は境界が徐々に薄れてきています。

ウェルビーイング・健康いきいきを実現していくためには、制度があるのみでは不十分であり、「職場」が制度や組織的な仕組みの推進役となることが重要だそうです。
健康いきいき職場のためには、健康いきいきを目的にしないこと(自分たちにとってプラスである、得であるようにする)、必要以上に現場を忙しくさせないこと(誰かを犠牲にするのではなく全体の皆が働きやすいようにする)が求められるとのことです。

ウェルビーイングのマネジメントにおいては、ウェルビーイングを促進するマネジメントが結果として妨害してしまっていることも起き得ます。
誰もがウェルビーイングを持って働きたいと思っているにもかかわらず浸透していかない、その理由をきちんと考える必要があるとご提言いただきました。

 産業医科大学 産業生態科学研究所 教授 江口 尚 氏
「産業保健から見たウェルビーイング」

はじめに、労働安全衛生法や健康の定義(WHO・ILO)をご紹介いただいた上で、ウェルビーイングは決して新しい概念ではないとご説明いただきました。元からやっていたことの色付けや意味づけが変わってきたものであり、産業保健職がしっかりと役割を担っていけると考えているとお話しいただきました。

産業保健職を雇用している理由を企業にたずねたところ、①法律で決まっているため(コスト)、②投資のため、と大きく分けて2つの答えが返ってくるそうです。後者は、無形資産としての従業員の心身の健康ととらえることで「投資」の対象になっているということを表します。「投資」という観点では、経営者ときちんと話ができる産業保健職を雇うことが重要であり、そのような人材は増えつつあると言います。

身近な目の前にいる自分の会社に居る人たちが生き生きと働ける状況がしっかりとあるかどうか、これは人権問題でもあると問題提起いただきました。
Society 5.0やSDGsに加えて、職場の孤立・孤独は今後重要性が増す課題であるとし、テレワークによる物理的な孤立だけでなく、その場にはいるけれども孤立・孤独が高まるといった状況もあるとご指摘いただきました。

ウェルビーイングに関する取り組みをはじめとして、産業保健に求められるスキル・経験・知識は多様化・高度化しています。
多職種連携(インターセクターアプローチ)が必要不可欠であること、加えて産業保健職に対しても期待して意識的に関わることで様々なアウトプットにつながるとご提言いただきました。

東急株式会社 健康経営・安全衛生担当 課長 小暮 純一 氏
「健康を起点にウェルビーイングへ」

東急株式会社では、中期三か年経営計画における重点施策である「変革のための原動力として“個”の最大化を支援することにより、企業価値の最大化を図る」に基づき、健康経営を展開しているとご紹介いただきました。
創業者である五島慶太氏の「人の成功と失敗のわかれ目は第一に健康である」とのメッセージを、健康経営の拠り所にしているとのことです。

具体的な取り組みとして、①喫煙対策、②若年層のメタボ対策についてご紹介いただきました。
①喫煙対策では、喫煙所の廃止等の「強制」の施策とあわせて、禁煙サポートキャンペーン(産業医による禁煙外来・費用補助)等の「支援」の施策を行っているそうです。
「強制」と「支援」のバランスをとり、自発的に取り組んでもらうことがうまくいく秘訣であるとお話しいただきました。
②若年層のメタボ対策でも同様に、自発的な取り組みを支援することに重点を置き、自ら考えた体質改善に向けた取り組みに対して、会社が一定額を費用負担をする企画を行ったとのことです。

一人でも多くの従業員の意識変容・行動変容につなげていくためには、会社として背中を押すこと・周囲のサポート・コスト意識・公平感・腹落ちが重要であるとご提言いただきました。
「ウェルビーイング=身体的×精神的×社会的(掛け算)」であるとし、身体的・精神的な側面については産業保健(労働衛生)や労務管理、社会的な側面については人事や働き方改革担当の守備範囲であるとして、3つすべてが1以上の取り組みを進めていくよう意識しているとお話しいただきました。

味の素労働組合 中央執行委員長 前田 修平 氏
「ポストコロナ時代の生きがい・働きがいを考える」

冒頭、味の素労働組合では「生きがい・働きがい向上なくして、個人・企業の成長なし」というメッセージを強く発信し、現場への浸透をはかってきたとお話しいただきました。
2020年の株主総会では「働きがいを起点とした企業価値向上に努める」ことが明言され、労使で「働きがい」に注目して各種の取り組みを進めていく追い風となったそうです。

順に、2007年以降の春闘での取り組みをご紹介いただきました。
春闘の取り組みのなかで、働き方を見直しワーク・ライフ・バランスを重視することが労使の共通認識になってから、生産性向上を追求しながら働き方改革を推し進める動きが強まっていったそうです。
その後、2016年の春闘では、全員が一体となりながら経営層が率先して時間生産性向上に取り組んでいく「本気」を引き出すことをねらいの一つとして、所定労働時間の短縮を要請し、20分短縮の回答を得たとのことで、これは大きな転機となったとお話しいただきました。

今後に向けて、やはり今一度、働きがいが個人の成長にとっても、企業の成長にとっても、世の中の貢献のためにも「起点」となるということに立ち返ることが必要であるとご提言いただきました。
そのうえで、今何をすべきかということをしっかり定めて取り組みを進める、グループ全員がそれぞれの強みを活かし合って応援し合って総合力を発揮していくことが、働きがいに寄与すると考えているとのことです。
従業員の生きがい・働きがいが、結果として個人や企業の成長・社会への貢献につながっていくという順番を決して間違うことなく、ウェルビーイングの促進へとつなげていきたいとお話しいただきました。


後半では、いただいたご質問をもとにパネルディスカッションを行いました。
その後、ブレイクアウトセッションの機能を用いて、グループでの意見交換を行いました。

最後に、事務局より直近のイベントについてご紹介し、盛況のうちに閉会しました。


近日開催予定のイベント

特別シンポジウム「ウェルビーイングの可能性と課題を考える ― 新たな健康いきいき職場づくりの実装に向けて ―
定例セミナー「バーン・アウトとワーク・エンゲイジメント ―「やりがい搾取」から「働きがい」向上へ 新時代の健康いきいき職場づくりを考える―

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