
2018年3月12日(月)に春季定例セミナーを開催しました。
今回はテーマを『眠り方改革~睡眠から企業と社員を活性化』と題し、睡眠や休息といった仕事外の取組みを通じて従業員の健康度やモチベーション、集中力の向上を図る、その手法について取り上げました。講師には北里大学の島津明人先生をはじめに、睡眠のスペシャリストであられる労働安全衛生総合研究所の高橋正也先生、そして睡眠改善を社内の取組みとして実践している帝人株式会社とオムロン株式会社のご担当者をお招きし、様々な業種・業界から40名近くの方々に参加いただき、盛会となりました。
最初に北里大学の島津先生より『仕事外の要因に注目したワーク・エンゲイジメントの向上』と題した講義をいただきました。これまでも島津先生にはワーク・エンゲイジメントの概念について説明いただいておりましたが、今回は仕事外の要因、例えば睡眠や休息、余暇活動などを通じたエンゲイジメントの向上策をお話いただきました。
序盤に日本人の諸外国と比較した年間労働時間や有給休暇取得率の国際比較を説明いただいたのち、休暇改革国民会議やポジティブオフといった休暇・休息に関する政府の取り組みを紹介いただきました。また「気晴らし」のストレス軽減効果については、積極的な努力と気晴らしが1年後のストレス反応の低下につながるとのデータが示され、参加者の関心を集めていました。今回のセミナーテーマである「睡眠」に関しては、ワーク・エンゲイジメントが良好な睡眠と生産性につながり、不眠症状や起床困難、日中の眠気などに良い効果があることが示されました。
次いで労働安全衛生総合研究所の高橋先生より『経営の観点から捉える眠り方改革』と題した講義をいただきました。高橋先生は睡眠に関するスペシャリストであり、これまでも睡眠と経営・生産性に関する多くの記事を執筆されています。
冒頭、現代日本人がいかに「眠らないか」説明いただきました。日本人の睡眠時間が世界各国に比べても短いことは知られるようになりましたが、OECD加盟国では韓国に次いで2番目に短く、成人で睡眠時間が7時間未満の割合は74%にも上ることは大変な驚きでした。また1992年から2012年までの経年データでみると、平日6時間未満の労働者の割合は年々増え続け、2012年には47%にも達しています。
その後、睡眠をしっかりとることによる効果として「創造性が高まる」「顔が読める(相手の細かな表情を理解できる)」「倫理観を高める」の3点を示されました。いずれも働くうえで誰しもが求められる点であり、睡眠の改善は真っ当な経営と生産性の向上を実現するために必要であると説明いただきました。
■労働安全総合研究所:高橋先生の講演の様子
続いて島津・高橋両先生にくわえ、帝人株式会社ヘルスケア新事業部門:濱崎洋一郎様とオムロン株式会社グローバル総務部:岩村加奈子様、健康管理センタ:今川かおる様を交えてパネルディスカッションを開催しました。帝人株式会社、オムロン株式会社の両社は「睡眠改善」を社内の取組みとして実施されており、実施スキームや効果、今後の改善点などを話し合いました。
帝人株式会社では2017年より株式会社フジクラと共同で睡眠力改善プログラムを実施されており、パネルディスカッションではプログラムによる疲労回復やメンタルヘルス、ワークエンゲイジメントへの効果を説明いただきました。また過去には日本人の睡眠実態を調査され、国民の約20%が睡眠に問題を抱えていることが明らかになったそうです。
オムロン株式会社では集中力向上をキーワードに健康経営に関する様々な施策を実施されています。睡眠はその一環としてムーブバンドを使った社内イベントや睡眠に関する情報提供などに取り組まれています。両社とも経営戦略の一部として睡眠改善に取り組まれており、参加者からも多くの質問・意見が飛び交い、盛況でした。
■オムロン株式会社:岩村様ご発表の様子
■パネルディスカッションの様子
右手前より島津先生、高橋先生、
帝人:濱崎様、帝人:鈴木様、オムロン:岩村様、オムロン:今川様
最後に参加者同士でグループを作り、それぞれの企業での睡眠に関する取り組みの様子や自社で取り入れるとすればどのような方法で行うかなど、ディスカッションをしていただきました。セミナーで登壇いただいた方々にもグループに入っていただき、途中質疑応答を交えながらどのグループも積極的に議論を交わされている様子が印象的でした。
■グループディスカッションの様子。どのグループも活発な意見交換が行われていました
今後のセミナーでもこうした横のつながりが生まれるプログラムを取り入れ、フォーラムメンバーとして協力し合いながらいきいき職場づくりを推進できるよう努めてまいります。