Event & Seminar7月定例セミナー「サマリー・当日資料(会員限定)」公開しました

2015年7月30日、健康いきいき職場づくりフォーラム定例セミナー「産業保健と健康いきいき職場づくり~産業保健からの新しいアプローチ~」が開催され、多くの方にご参加いただきました。また、各人が自職場での活動につなげられるよう、ワークショップ形式での討議も行われました。

「職場の新しいメンタルヘルス対策と経営戦略の中核を担う健康管理部門」(川上憲人氏)

まず最初に、川上憲人氏(東京大学大学院医学系研究科教授)より、「産業保健スタッフと健康いきいき職場づくり」と題してお話しいただきました。フォーラムの活動の特徴である「ポジティブなメンタルヘルス」「職場の社会的心理的資源へのアプローチ」「経営として取り組む」といったことに取り組むには、健康管理部門(ヘルスセクター)だけでは難しく、広くビジネスセクターとの組織的協力を募るとともに、組織内での競業を避ける必要があるため、ヘルスセクター側がリーダーシップを取ってステークホルダーを巻き込んでいくことを進めてほしいという期待を述べられました。

「産業保健部門とビジネスセクターの相互補完が組織開発研修の基盤に」(難波克行氏)

続いて、産業医という立場で社内での連携を図りつつ活動を推進している事例として、中外製薬株式会社で統括産業医を勤めている難波克行氏のお話をいただきました。同社では、近年組織開発に力を入れ、職場の一体感、チームワーク、働きがい・やりがい、生産性の向上を目指して各種研修を行っています。具体的には、チームとメンバーの目標共有や連携、相互尊重などを通じ、チーム力を体感し、その向上を目指す「チーム・コーチング」という手法を取っています。これらを実施する上で留意しているのは、現場のマネージャーに本気になってもらうために、事前のすり合わせを念入りに行う点、研修前後での効果測定を行う点だそうです。また、効果測定では、意外にも職場レベルより事業場レベルでの資源の向上が見られたそうです。実際に研修に参加した方のコメントとしては、協働や所属の大切さ、職場での社会化や人材育成効果が挙げられています。
では、なぜこの様な取り組みを産業保健部門と人財育成部門が共同して行っているのでしょうか。それは、両部門とも組織にポジティブな側面からアプローチしたいという思いがある中で、ノウハウを人財育成部門が提供し、効果測定を産業保健部門が行うという相互乗り入れができたのが大きいと難波氏は語ります。また、徐々にではあるが取り組みに興味を持ってくれる人が増え、成果や意義などを写真なども交え、わかりやすく宣伝したことも効果的だったそうです。とはいえ、社内での認知度や同様の取り組みの連携は今後の課題であるということでした。他にも、健康・キャリア・ハラスメントといった、職場関連の相談機能での情報共有を行うなど、関連部門との連携に力点を置いた活動を推進しているとのことでした。

「課題解決型・ポジティブ型の活動が職場改善に寄与」(道村緑氏)

次に、健康管理部門が中心となって職場改善を進めている事例として、帝人株式会社健康管理室の道村緑氏よりお話をいただきました。同社は、近年健康経営への積極的な関与を行っていますが、その起点には、やはり職場のメンタルヘルスの悪化があったといいます。フィジカル疾患と比較して労働損失が大きいメンタル疾患に対応すべく、個々人への対応(相談対応、休復職支援、メンタルタフネス教育)とともに、職場環境改善活動を中心としたきめ細やかな活用が、成果を挙げつつあるとのことです。
特に、近年はストレスチェック結果を起点とした活動に力を入れ、設問内容の強化や、従業員参加型の職場環境改善活動、その担い手としてのファシリテータ教育、当フォーラムAWP研究会参加を通じて得られたポジティブ改善活動へのアプローチなど、多様な取り組みを徐々に進めています。ファシリテータ教育では、ストレスチェックの見方説明や職場改善活動の目的・方法、アクションプラン策定法、好事例集などを提供しています。今年度実施のストレスチェックでは、今回初めて行ったポジティブ改善活動の成果として、ワーク・エンゲイジメント、職場の一体感などへの効果があったとのことで、今後もさらに活動を推進していきたいと道村氏は述べました。

「ワールド・カフェによって、他の人からも様々なアイディアを得られた」(参加者の声)

このあと、登壇3氏を交えた質疑応答・共同討議で、会場からの質問も交えたさらなる深掘りを行いました。また、いきいき職場づくりの推進員を養成するため、10月から開催される「第5期組織ソリューション研究会」の概要の紹介が行われました。さらに、今回は参加者間の相互交流と、実践につなげるためのサポートとして、「健康いきいき職場づくりに関連部門を巻き込むには?」と題して、ワールド・カフェ(カフェのような空間で起こる会話を基に、アイディアや新しい知識の生成と共有を行う話し合いの手法)方式のワークショップを実施しました。
(質疑内容やワールド・カフェで出された意見については会員限定で公開。メニューより会員ログイン後に質疑応答と当日の資料をご覧いただくことが可能です)

次回開催は10月19日です。