Event & Seminar8月定例セミナー「企業価値と健康経営」サマリーをアップしました

2018年8月2日(木)に夏季定例セミナーを開催しました。
今回はテーマを『企業価値と健康経営~戦略と実践の融合~』と題し、ESG投資や国連のSDGs(持続可能な開発目標)といった昨今注目が高まっているサステナビリティと健康経営を掛け合わせ、健康経営の取組みがいかにして長期的に企業価値向上に繋がるか探りました。日本政策投資銀行様による講演と丸井グループ様と三井化学様の企業事例の紹介、登壇三者によるパネルディスカッションをおこない、当日は気温が35度を超えるなか、人事・経営企画の担当者を中心に約50名の方にお集まりいただきました。改めて篤く感謝申し上げます。

はじめに株式会社日本政策投資銀行サステナビリティ企画部の橋本明彩代様より『企業価値と健康経営~中長期的な企業成長を支える企業経営~』と題した講演をいただきました。
冒頭、健康経営の概要や日本政策投資銀行が取組むESG関連の評価認証型融資制度についてご説明いただきました。橋本様からは投資家にとって金融危機を契機に投資目線が短期から長期に移り、従来の財務面のみならず「非」財務情報が投資家を惹きつける重要な要素になっていることから、ESG投資が国内で急速に活発化しているとご指摘があり、健康経営も長期的に非財務側面として重要性が高まり、企業価値を高める施策として取り組む企業が増えつつあるとの説明がありました。
また健康経営はリクルーティングにおいても重要な要素となりつつあり、経産省が調査した就活生・またその親ともに50%近くが「従業員の健康や働き方に配慮している」ことを条件に望むと回答したデータも示されました。
最後に健康経営を経営戦略として取組む際のポイントや、実践している多くの企業事例を紹介いただき参加者から高い関心が寄せられていました。


■日本政策投資銀行:橋本明彩代様

続いて健康経営を経営戦略として取組む企業事例として、1社目には株式会社丸井グループ健康推進部長・統括産業医の小島玲子先生より取組みの紹介をいただきました。
丸井グループでは「サステナビリティ経営」を重視しており、そのテーマにインクルージョンを掲げられています。SDGsには労働に関する項目が4つほどありますが、そのうちの「3.すべての人に健康と福祉を」に焦点を当て健康経営を推進されています。社内での健康経営推進にあたっては「手挙げ式」の有志によるプロジェクトとしており、上からの命令ではなく、従業員による自発的な取組みにすることにより、社員の健康意識向上を図られています。
また本日のテーマでもある企業価値向上の面からは、経営トップである青井社長の強い意志のもと健康経営を推進されているとお話がありました。小島先生も健康経営は「健康を目的としない」ことを強調されており、丸井グループでは健康経営を通じて社員自身には活力や充実感を、組織にはチーム力向上や業績向上、会社にはステークホルダーの幸せの実現を目指すことにより、健康を通じた人と組織の活性化を目指すことを説明いただきました。


■丸井グループ:小島玲子先生

2社目の企業事例では三井化学株式会社 本社健康管理室長・統括産業医の土肥誠太郎先生より取組み紹介をいただきました。1社目の丸井グループ様は小売業を営む企業ですが、三井化学様は化学メーカーであることから、健康経営について主に労働安全衛生の観点から説明いただきました。
最初に社内での健康経営推進におけるPDCAサイクル・KPIの設定を説明いただきました。総合的なKPIとしてアブセンティーズム・プレゼンティーズム、在職脂肪やメンタルヘルス不調発症率、生活習慣病リスク存在率等を設定され、そのうち生活習慣病対策としてミニ駅伝や「ヘルシーマイレージ合戦」と呼ばれるチームもしくは個人で約3か月間、運動量や健康的な生活をポイント(マイル)として貯めて賞品と交換できるプログラムを実施するなど多様な取組み紹介をいただきました。
またメンタルヘルス対策ではメンタルヘルス風土調査(WIN:産業医科大 真船先生ら開発)を実施しており、27の項目から職場の望ましい特徴を調査されています。具体的には「指示系統」「労務管理」「連携協力」「研修機会」の4つを健康問題の発生リスクを低減し、職場改善のカギとなるメンタルヘルス風土尺度と位置づけ、これらの尺度と総合健康リスクのクロス分析を実施するなどの取組み紹介がございました。


■三井化学:土肥誠太郎先生

続いてご登壇いただいた日本政策投資銀行:橋本様、丸井グループ:小島先生、三井化学:土肥先生をパネリストにディスカッションを行いました。
今回のセミナーでは小売業である丸井グループ様と製造業である三井化学様に事例紹介をいただきましたが、その取組みの内容・スキームはそれぞれです。パネルディスカッションでは健康経営に取組み始めたきっかけや経営戦略・企業価値との関わり、また橋本様には金融市場の観点から捉えた両社の違いなどをご発言いただきました。


■パネルディスカッションの様子(右から橋本様、土肥先生、小島先生、左端は事務局)

最後に、各グループで参加者同士意見交換をしていただきました。当日は人事・経営企画といったスタッフ部門の方から、保健師や社労士といった産業保健・労務管理の専門家まで幅広い方がご参加いただき、それぞれの会社、立場の視点から健康経営に関する闊達な意見が交わされていました。約15分間と短い時間ではありましたが、意見交換を通じて各所で新たに相互的なつながりが生まれいている様子が大変印象的でした。

   

   
■グループ意見交換の様子。先生方にも各グループに入っていただきました!

当フォーラムでは今後も定例セミナーを紹介の場に留めず、参加者同士の連携・交流の場としても設定して参ります。ご参加いただいた皆様おかれては改めて御礼を申し上げます。
今回は参加が叶わなかった方は是非、次の機会にお越しいただけると幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。